心の対話 「良い素材があるからこそ」いくら良いものがあっても、知られなければ存在しないのと同じなんです 〜渡邉英彦〜 作り手の視点だけでなく、消費者の視点に立つことも本当に大事ですね 〜清信一〜

これからは富士山エリアでものを考えないと
清 その通りですね。
そういう意味では、毎年『蔵開き』をやっているのも、
町おこしに一役買えればなという思いが強くあってのことです。

その意をくんで、
役場(旧芝川町役場)の人たちも含めて
多くのボランティアの方々が自主的にお手伝いに来てくださって、
私としてはすごくやりがいを感じています。
渡邉あれはすごく貢献していると思いますよ。
富士錦の蔵開きは、(旧)芝川町最大のイベントでしょ。

ただ、ちょっとひねくれた見方をすると、
なんで富士錦という一企業のために町のみんなで盛り上げるんだ
と思ってしまう人もいるわけですよ。

でも、それは違う。
何でもいいから地元のものがひとつ元気になれば、
絶対に波及効果が生まれるんですよ。
だから、ひがんでいても何も始まらない。

やきそばや富士錦ばかりが目立って…と考えるのではなく、
そういう人はそれをうまく活用すればいいじゃないですか。
たとえば、蔵開きにたくさん人が来るんだったら、
蔵開きに行ってビラを配ればいいわけですよ。
清 そうですね。
私もどんどんそういう場に利用してもらっていいと思うんですよ。
渡邉そうすれば、わざわざ新聞に折り込みを入れなくても、
広告できますからね。

そういう意味では、今年から富士宮と合併したわけですが、
これからは芝川とか富士宮なんて言っている場合じゃなくて、
富士山エリアという枠でものを考えることも大事だと思いますよ。

富士山を取り巻く地域の素材としていろいろなものをアピールして、
富士山エリア全体で盛り上がらないと、静岡空港も意味がない。
いくら富士宮にやきそばを食べに来てくださいと言ったって、
飛行機に乗ってきませんよ(笑)

だけど、富士山はわざわざ遠くから見に来る価値がある。
で、その周りにご当地グルメがいくつもあったり、
おいしいお酒もあったり、温泉があったりと付加価値が加われば、
より来る人も増える。

それは富士山をグルリと囲んでいて初めて成り立つ話だから、
隣の町と対抗してだとか、
そういうことを言ってる場合じゃないでしょ(笑)
清 なるほど。視点をどこに置くかによって、
考え方は全然違ってきますね。
私たちももっと大きな視野でものを考えないといけないですね。
五感で直接感じた記憶は、ずっと後まで残りますよね
渡邉 だと思いますよ。
ところで、もっとお酒の話をしなくていいんですか(笑)
そうですね(笑)
では、ふだんからお酒は召し上がるんですか?
渡邉もちろん、お酒は大好きですから。
日本酒は毎日飲むというわけではないですが、
外食をしたときにおいしいお酒があれば、飲むという感じです。

富士錦も、店に置いてあればよく飲みますよ。
あと、僕の場合は仕事の関係でいろいろな地方に行くので、
その地域の地酒を飲む機会も多いですね。
たいてい誰かが持ってきてくれますから(笑)
清 そうでしょうね。
私がお迎えする立場でも、絶対にお酒を持っていきますから(笑)
ところで、お酒との出会いというのはどんな感じでしたか?
渡邉 僕は大学は東京に出ていて、最初に仲良くなった先輩が
秋田出身ですごく酒好きの人だったんですよ。
それで、その先輩に連れて行かれて、
居酒屋に入り浸るようになっちゃって。

でも、学生だからそんなに良い酒はね……当時は二級酒ですよ。
大量に作っている安い銘柄で、ベタベタした口当たりの。
でも一級酒も置いてあって、飲み比べれば明らかにうまいんですよ。
だから、バイト代が入ったときとか、
たまに奮発して一級酒を飲んだりした思い出があります。
清 初めて、ああこのお酒は本当にうまいなと思った記憶は?
渡邉それも学生のときだけど、
サークルの合宿で新潟に行ったんですよ。
もう30何年前ですね。

そのときに民宿の親父が、
これは地元の酒でまだあんまり外で売ってないけど、
けっこううまいんだぜって感じで持ってきてくれて。

今は全国ブランドの銘柄だけど、
当時は地元でしか飲まれていなかった酒で、
ああこれはふだん飲んでいる酒より全然うまいなと思いましたね。
清 そういう経験は、すごく記憶に残りますよね。
うちも、蔵開きとは別に、
見学させてほしいという申し込みがかなりあるんですよ。

それも、大人のグループだけじゃなくて、
地域の産業を見たいという小学生や中学生の見学希望が
意外に多くて。
本当だったら飲んでもらえばいちばんありがたいですけど、
そうはいかないので(笑)、新酒の香りを嗅いでもらうんですよ。

そうすると、
お米だけで造ったとは思えないようなフルーティーな香りがして、
かなりビックリするみたいですね。
それは外国の方も同じように驚かれます。

そうして五感で直接感じてもらうと、
すごく印象に残るものらしいですね。
だから、大人になっても、
そのときにイメージが残ってくれていればいいなと(笑)
渡邉今の子どもって、出来上がったものしか見ていないですよね。
だから、そういうモノ作りの世界を直接見せるというのも、
すごく大事だと思いますね。
どれだけ大変なことをしているかというのは、
やっぱり見せないと伝わらないですから。
清 そうですね。
蔵元というのは、どちらかというと閉鎖的な世界で、
あまり見せないというのが普通なんですけど、
私が(東京から)こっちに来て
会長に蔵を初めて見せてもらったときに、
ものすごく感激したんですよ。

そのときの気持ちが強く残っているので、
微生物の管理さえしっかりできれば
蔵は見せたほうがいいなと思って、
蔵開きを始めたんです。
渡邉それは意味があると思いますよ。
日本人として日本の歴史とか伝統を肌で感じるという意味でもね。
次のページは 前のページは
Copy right (C) 富士錦酒造株式会社 All rights reserved