蔵元便り 柚野の里から

2002年01月

新しさ

霜柱が土を盛り上げ、霧が辺りを白く染め、早朝蔵の釜場から上がるもくもくとした蒸気だけが、唯一暖かさを感じる冬景色となりました。
世界情勢も日本国内も、大きな事件が多発して時代様相が大きく変わった去年一年間でした。 そして同時に新しい世界観を急速に求められる重要な転換期に差し掛かったことは、民間人の誰しもが感じる一年でもありました。
そんな時期に、NHKの「プロジェクトX」に代表される歴史情報番組に人気が出るのは、やはり先人達がピンチをどうやって切り開き今があるのか、それを知ることで勇気が出、奮い立つことができるからではないでしょうか。
また、日本でもっとも歴史の長い皇室では、皇太子妃雅子様が、無事、敬宮愛子内親王をご出産され、新しい時代を迎えられました。
皇太子妃として、歴代の皇太子妃の思いに、ご自分を重ねられる日々も、きっとおありだったはずです。 伝統の強さとは、先人の知恵と決断力が宝庫となって今につながっているのではないか、という気がします。
先月、富士錦では、蔵の玄関に「酒林」を掲げ、例年どうり新酒が搾れたことを祝いました。
杜氏たちが、米を洗い、蒸し、醸していく姿は、今までとは何等変わりはありません。 が、そこには先人の知恵の結晶が溢れている、そんな思いをことさら強く感じさせられました。

新酒の福々しい香りを、富士錦の蔵から皆様にお届けしようと、社員一同驀進しております。
世界からありとあらゆる飲み物が輸入されてこようとも地酒に勝る物はなしと、そんな意気込みで醸しています。
地酒の豊かさを堪能し、どうぞ今年の一年も富士錦酒造株式会社をお引き立てください。