蔵元便り 柚野の里から

2003年11月

ぐっと寒くなりました

 ご無沙汰しております。
先月号は都合により休刊させていただき、申し訳ありませんでした。
季節も移り、ぐっと寒くなってきました。
朝早く事務所に向かうと、吐く息が白く曇り、思いのほかに冷え込んでいることを知りました。

そんな折、富士錦からさほど遠くない「田貫湖」へと出かけました。
秋晴れの気持ちの良い休日で、湖畔沿いのきれいに整備されたサイクリングコースは、徒歩で約1時間、自転車でなら20分弱と、「ちょっと行こうかな」と出向くにはちょうど良いコースです。
「ちょうど良いコース」「ほどほどのハイキング」にもかかわらず、その景色の雄大なこと。
見上げる富士山は雄雄しく、湖畔へ目を向ければ、逆さ富士がくっきりと浮かび、時折波打つ湖のきらめきと杜に囲まれた緑の豊かさは、まるで北欧のポストカードを切り取ったかのような美しさです。
車を15分も走らせれば、こんな景色の中でリフレッシュすることができるこの地は本当に豊かです。
ところで、「お米はどんな具合ですか?」が、今年の秋のご挨拶。
皆さんやはりちょっと心配そうな顔をなさっています。
何て言ったって、今年の天候は、雨・雨・雨。収穫が心配になるのが普通です。
皆さんもご存知のとおり、お米は「コシヒカリ」に代表される「食用米」と、酒造に使うお米とで品種が違います。
「食べておいしいお米はお酒には向いていない」というのは得てして間違いではありません。
お酒造りに向いているのは一粒一粒の粒が大きいお米です。
そんなお米を育てるために、酒造り用のお米は、晩生といって、食用米より2週間ぐらい田植えが遅いのです。
今年は、この違いにのため、実るために必要な稲の花の開花時期の日照時間を酒米は確保できたのです。

運も手伝い、おかげさまで、富士錦での米の収穫は例年通りとなりました。
毎年毎年、天候は変わります。お米の出来具合も違います。  しかし、どんなに季節が巡っても春になれば「富士錦」の純米酒といえる酒を醸し出す。それが、300年の伝統です。