蔵元便り 柚野の里から

2003年12月

大きな魅力

 冬が来ました。
新酒の完成を告げる冬の風物詩「杉玉」を軒先に飾るのもあと数日と迫ってきました。
この「杉玉」は、酒造りに欠かせない杉の木を使って、新酒の完成を祝う酒蔵に代々言い伝えられている神事の一つです。
私は、この時期が一番ワクワクと胸が躍る季節です。
ブツブツと声を立てて育つタンクの中の「もろみ」が、どんな酒となって生まれてくるのか・・・
これは、初絞りの酒が持つ、なんともいえない醍醐味のひとつです。
師走を前に、慌ただしくなってきた事務所とは裏腹に、蔵の中の荘厳ともいえる静けさの中で、「ひっそりと」でも「しっかりと」息づく「もろみ」の息遣いは、優しい気持ちと大きな夢を持たせてくれます。
「酒造りは大和魂です」と断言する当蔵の「畑福杜氏」が、ひたすらに酒造りにのめりこむ今年の半年が始まりました。
数日たつと蔵からは毎日のように新酒が生まれ、芳醇な香り漂う酒蔵となります。
ところで、財務省の貿易統計によると、日本酒の米国向け輸出額が、8年前の約3倍になっているそうです。
純米吟醸酒などの高級品の人気が高く、白ワイン感覚で冷酒を飲む人が増えていると評し、最後に「日本酒が今後米国で大流行する可能性があると結んでいました。
その陰には、輸出している蔵元の地道なPR活動があるようですが、この記事を読み非常に嬉しくなりました。
ひとつは、日本酒のおいしさが、遠く国外においても認められた事実。(実際、日本酒製造技術は世界に冠たる技術である「並行複式発酵」によって醸し出されるのです。)

もうひとつは、商社マンでも一部上場企業でもない、全国に点在する地方の中小企業である「地酒屋」が、遠く海を越えたPR活動を行い、それがひとつのうねりを生み出そうとしている事実。

その志の高さ。きっと現在の日本酒の品質の高さは、世界の舞台に立っても、大きな魅力を放つに違いない。
そんな思いを強くした初冬でした。