蔵元便り 柚野の里から

2004年03月

春の到来

 ほのかな香りに振り向くと、紅白の梅の花がほころびはじめ、春の到来を告げていました。
思いのほか暖かい日が続き、ここ柚野の里にも春の足音が聞こえだしました。
現在、富士錦では次々と新酒が誕生し、一冬の酒造りの成果が見えてきました。
今年度は、米が例年より硬く、もろみでの米の溶けがあまり良くなかったのですが、その結果、例年以上にきれいなお酒が出来上がりました。
日本酒の造り方は、その行程が入り組んでいて非常に複雑な上、言葉を尽くしても専門用語も多く実際一冬作ってみないと、その全容はわかりづらいといっても過言ではありません。
しかし、原料の米が造りの行程でどのような名称に変わっていくのかを追うと、意外と全体がわかり易いのです。そこで、その行程を追ってみます。
まず、お米は蒸して(お酒の米は炊くのではなく蒸すのです。)「蒸米」になります。そして、「蒸米」は麹菌と混ざり合って「麹(こうじ)」となります。次に「麹」に蒸し米と水と酵母を加えると「モト(酒母)」となります。「モト」にはさらに蒸米と麹と水が加えられ「もろみ」となります。そして「もろみ」を搾ると「日本酒」になるのです。
「モト」と「麹」のいずれのタンクでも、酵母(酵母菌)という微生物が、糖分(ブドウ糖)を食べてアルコールと炭酸ガスを出します。
これが発酵の原理です。
酵母は糖分がなくてはアルコールを生みません。だから、米のようにブドウよりはるかに糖分の少ない原料を使って醸造する日本酒は、世界に類を見ない「並行複式発酵」という日本酒独自の複雑な発酵の仕方を生み出したのです。
今年もおかげさまで、もう少しで甑上げ(こしきあげ)(すべての米が蒸しあがる事)を迎え、めでたく3月14日(日)に蔵開きを開催する運びとなりました。

是非、お米の流れを追いながら蔵見学をしていただくと、造り方がよりわかりやすいかと思います。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。