蔵元便り 柚野の里から

2004年10月

畝取り

 銀木犀の香りが、稲刈りをする手元まで届き、秋がそこまで来ています。
今年は、この銀木犀も8月・9月と二度咲きし、残暑の厳しさを物語るかのようです。
今年の天候は、稲作にとっては願ってもない気候となり、富士錦の自社田米も十年に一度の豊作となりそうです。
一畝・一反・一町歩という田畑の面積を数える単位がありますが、先日、社長が「畝取り(せどり)」という言葉を教えてくれました。
十畝が一反、十反が一町歩なんだけど、一畝で一俵も収穫できた年は「今年は畝取りだったやぁ」と言って、この辺りでは大喜び。 大体十年に一度しか巡り合えない豊作の年回りだそうです。
収穫時に長雨にも合わず、太陽の光を充分当たって刈り取られた稲は、品質も良好の模様です。
少し奥手の酒造好適米「山田錦」は、刈取りまでもう一息。 稲穂から一粒とって、籾を外し、米を見ると、「心白」という米の中心部がすでに形成され、目で見える大きさに育っていました。
「心白」は酒を醸すときの重要な栄養源。 少し黄金色を帯びた田を見ながら、タンクで泡立つ芳醇なもろみの香りを思います。
今日、専務は岩手へ向かい、蔵人たちと顔合わせの会をしています。

冬の酒造りへの意気込みを一晩かけて話し合い、両者心地よく入蔵し、酒造りをするための会です。
米を作り、酒を造る。 そこに大きな夢が生まれる。 やはりモノ造りはロマンなのですね。