蔵元便り 柚野の里から

2005年03月

春一番

 春一番が、辺りを黄砂か、はたまたスギ花粉で黄色く染めながら突風を起こし、外にある酒箱や飛び散るダンボールの片付けに追われた大風の一日でした。
もうすぐ、春近しといったところでしょうか?  待ち遠しいですね・・・。
現在、蔵の中では大吟醸が佳境を迎え、いつしぼるかのタイミングを見る、そんな大詰めに入っております。
日々、もろみを汲んで分析を重ね、データを取り、グラフを読む。
今日しぼるか・・・まだ早いか・・・ そんな判断でお酒の出来は大きく変わります。
本当に不思議なほど、しぼるタイミングで酒質が変わるのです。 それを測るのが、杜氏の経験の賜物です。
今、蔵の中は静かな熱気に溢れています。
ところで、富士錦が酒を造り始めておよそ300年。 いわゆる「産業革命」の以前から酒を造っていたご先祖さまがいるわけですが、その酒の造り方は、まさにすべて人力の頃から現在に至るまで、燃料の種類や電気の有無によって、道具も変遷してきました。
30年前は、瓶を洗うのも手仕事、一升瓶に詰めるのも手詰めで行い、自動瓶詰機が導入されたのは昭和50年代に入ってからの事でした。
大きな円形の入れ物に水をため、そこに瓶と洗剤を入れ、一升瓶を一本一本専用の柄の長いブラシで洗っていくおばちゃんたちのたくましい姿は、今でも脳裏に焼き付いています。
洗い終わった瓶は、専用の水切り用手押し車に乗せられ、翌日の詰め口を待つのです。
そんな、今は使われなくなった諸々の道具が、蔵の裏手に積まれてあったのですが、長年の風雨にさらされ、さび付いて、土台も少し傾いて、そのままにしておくには、少々危なくなってしまいました。また、東海地震も声高に叫ばれている今、思い切って先日、それらを少し整理いたしました。
確かに、ひとつの時代を担って活躍してくれた道具にはさまざまな思い出も甦ってきて、蔵元の少しさびしそうな横顔が心に残りました。

整理し片付ける。 リフォームの匠のように、古きを生かしながらより現在の様式に即した環境を作る・・・。
そんな目標に近づければいいなと思う月の初めとなりました。