蔵元便り 柚野の里から

2005年10月

地元に根付く

 休日になると、あちこちのグランウンドから歓声が沸き、運動会たけなわです。
子どもたちの掛け声が高く響き、日本晴れの空の下、その掛け声は通りすがりの車中まで幸せな気分を届けてくれました。
先日、久しぶりに足をのばして、伊豆に行って参りました。
久々に見る白浜海岸のあまりの綺麗さにびっくりして、思わず波打ち際を歩いたこと。
堂ヶ島の向こうに見えるオレンジ色の夕日が大きく、あっという間に水平線に沈んでいったこと。
海に浮かぶ満月を飽きずに見たこと。
本当に心に沁みる風景でした。そして、このドラマティックに変わる一日の風景の移り変わりが、何にも代え難い伊豆の魅力だと実感し、不思議なほど、リフレッシュして帰ってきました。
ところで、その道すがら、風景とは別に、次々と現れる道路沿いのさまざまな看板がイヤでも目に入ってきました。
道路標識しか無いような里に暮らしていると、所狭しと重なるように掲げられた店の看板に、「世はまさに店舗過剰時代なんだな」って実感しました。 昨日までの繁盛店が、新たなライバルの出現によって、一転して不採算店になってしまうのも日常茶飯事のことなのでしょう。 シャッターの閉まった店も多く見かけました。
大手資本の新規大型店は、綺麗で品揃えも豊富。サービスも充実しているので、そんな店舗が出店されれば、人の流れは一気に変わってしまいます。
そんな地方は数多くあります。 しかし、大手はひとたび減益に転じれば、整理・淘汰の波も早い。そこには、そこに暮らす消費者の都合はまったく考慮されません。
地元に根付く商売とは根本的に違うのだから、そんなことが繰り返されたら、何十年後の町はどうなっているのだろう。
それは買物をする側にとっても大きな問題です。

地酒メーカーにとっても、このようなことはむろん対岸の火事ではすまされないことです。 地元に根付くことが、今ほどむずかしい時代もない、そんな気がしています。