蔵元便り 柚野の里から

2006年05月

伝統の良さ

 長い桜の季節に、初めて満開の下馬桜を見ることができました。
「狩宿の本陣」門前の歴史ある桜が見事に咲く誇る様は、本当に伝統的な日本そのもので、品格がある美しさでした。
たまには、冷え込む年もよいものですね。思いも掛けぬ春に会えたりします。
おかげさまで、今年も無事酒造りが終わりました。 その祝いの席で、畑福杜氏が語っていた印象的な言葉があります。
「私は、ここ富士錦さんにお世話になって、ちょうど十年になります。おかげで今年も無事酒を造り終えましたが、この十年間、蔵人が事故もなく怪我もなく、酒造期を過ごした事が、私のまず一番の誇りです。」と、力を込めて話されました。
半年間を蔵に住み酒を造り続ける仕事は、まさに過酷な体力と精神力を必要とします。 きちんとした自己管理力と仕事への責任感がなくしては、できるものではありません。
半年間、蔵人の気持ちをまとめ、そして、丹念な仕事を貫き通した結果、蔵人の和が醸され無事故に繋がった畑福杜氏の気概がこの言葉に表れています。
まず思う事は、半年の長丁場の酒造りも、年に一度の蔵開きも、無事に終わって良かったということです。そして、それは=各担当者が責任を持って各自の仕事を果たしたからやり遂げられた事に繋がるからです。

一日に三度の食事を決まった時間に取る。「いただきます」、「ごちそうさまでした」の挨拶を皆でする。
食事に遅れた人がいれば、席につくまで待っている。 普通に行なっている富士錦の食事風景は、現代の日本ではかなり伝統的な部類なのかもしれません。 しかし、こんな当たり前の光景が、皆の和を深めているのかもしれません。
昔から「同じ釜の飯を食った仲間」といいますもんね。

こんな富士錦が醸した酒が、おかげさまで今年も、県・名古屋の鑑評会で優等賞を頂戴しました。あとは、全国が待っています。