蔵元便り 柚野の里から

2007年08月

心模様

 洗濯場の向かいに植えたヤマユリが、真っ白な立派な花びらを開き、そこだけスポットライトが当たった様に華やかです。
今月は、里をぐるっと囲う山々の嶺からスーッと降りてくる霧の中で過ごした一ヶ月でした。山紫水明といえば、言えなくても…。
その分タンクで眠るお酒にとっては温度差が少ない為、過ごしやすい時だったようです。
先日、春以来初めてタンクの呑み口を開けた純米酒は、まだ若くフレッシュな味わい。聞き酒をした蔵元も、「良い出来だ」と一言…。
富士錦らしい独特の爽やかな甘みは、上品な和三盆のようなふくらみのある甘み。この甘みとふくよかな香りがバランス良く、酒室にぶれもありませんでした。

時間の経過とともに変わる日本酒の味わいを、それぞれの季節においしく味わっていただこうと、こまめに様々な工夫を重ねるのが、当蔵の夏の蔵仕事です。
代々引き継いだ富士錦の味わいを、そのままに、蔵を守り酒を醸し続け、そこに生まれる皆様との心模様を励みに、酒を醸し続けようと思っています。
決して明るいとはいえない酒類業界にあって、追い打ちをかけるような中越沖地震です。が、被災された皆様・酒蔵関係者の方々しっかりと立ち直って欲しい、そう願うばかりです。
もうすぐ、夏本番ですね。故郷の人が集まります。地酒と共にどうぞ楽しい夕べをお過ごし下さい。