蔵元便り 柚野の里から

2010年04月

土の匂い

蔵の石垣沿いの細い道を歩いていると、土の匂いが風にのって流れて来ました。
春だなあと思いながらその方角を見ると、道路向こうで、ウチのスタッフがトラクターに乗って田んぼの荒おこしをしている姿が小さく見えます。里にこの土の素朴な匂いが漂うと、田んぼ仕事の先陣が切られた合図。
ここから田んぼに水が張られ苗を育てて田植えへと農繁期へ突入し、そこで働く人も風景も一気に生き生きとしてきます。

その周りでは白木蓮が真っ白に高く咲き、川沿いや山沿いには桃が賑やかに桜の蕾も日増しにその色をピンクに染めて、富士山の麓のこの里山は、今、本当に「故郷の春」といった風情です。
ちょうど二週間前、平成の大合併の最後を飾り我が町芝川町も富士宮市となる、 その閉町式が行われていました。その奇しくも同じ日に三月の一大行事となった柚野村おこし「富士錦蔵開き」を開催しました。
今年も一万人を超える大勢の皆様にお越しいただき、晴天の中、無事開催させていただきました。ご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。
閉町式と蔵開きが重なった事もあり、地域の中の富士錦の存在意味ってなんだろう?としみじみ考えてみました。
お酒が出来たことを祝い、富士山を見ながら、お日様の下で田んぼにシートを広げて飲むお祭り。そこに一万を超える大勢の人に来ていただけるものとは、何だろう。
毎年、蔵の入り口でお出迎えする杜氏も、自分が造った酒をこんなにも大勢の人が飲みに蔵へ来てくれることへの、プレッシャーはないのだろうか?
杜氏曰く、「私は南部杜氏の仲間達にこの光景を見て欲しいですよ。杜氏仲間でも自分が造った酒をこんな大勢の人に集まって呑んでいただく光景を目にした人は、
きっといないでしょうから。」と。
蔵の中で、「うまいねえ、杜氏さん。」と一声かけていただくと一冬の仕事のつらさも和らぎ、心が満たされてくるといいます。
そして、田んぼで過ごしていただいたその数時間は皆様本当に笑顔で楽しそうです。きっと、畑福杜氏の醸す日本酒には人を幸せな気持ちにさせる魔法が込められているのではないでしょうか?杜氏のいつも変わらない穏和な姿からは、そんな気さえしてきます。

水も良く、景色も良く、故郷を思う人の心も温かいこの地は、日本酒作りにおいて、
外のどこにも負けない最適地である、そんな想いを強くしました。
この地を、多くの人に知って頂くことが、この蔵の使命かもしれません。また、来年に向けて、よりよい祭りにしていこうと思っています。
本当に多くの方のご協力とご来場心から御礼申し上げます。ありがとうございました。