蔵元便り 柚野の里から

2010年08月

酒肴の宝箱


真っ青な空に入道雲、長い梅雨がようやく開けたら一気に猛暑がやってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?暑中お見舞い申し上げます。
先日、海沿いにある用宗に、私は初めて行ってきました。駅を出てまっすぐ歩くとそこは海に続くまっすぐな道。
潮風に吹かれ猫が集会を開くアスファルトを歩いてみると、民家が並ぶこじんまりした港町はカラッとして明るく居心地の良い雰囲気です。そんな用宗のギャラリーで開かれている、京都今宵堂さんの晩酌の器展「肴(あて)のある街」を覗きに行ったのです。
京都今宵堂さんは、京都北区にて、若いご夫婦で酒器を専門に造られているのだそうです。
ギャラリーに飾られている器は、「一日の終わりにほっと一杯。とっておきの肴をちびちびとつまむ。」そんな愉しみを演出する器展。おかずを盛るにはちょっと小さくて、酒肴をちょこっとつけると、可愛らしくて色っぽい、そんな遊び心に満ちた酒器でした。そして、器のくせに、ドキッとするほど艶っぽいのでした。


その中で一際素敵だったのが、淡い行灯の光りに似た燈色の2勺の徳利とそれと揃いのお猪口でした。お酒を注ぐとなんだかすごくおいしそうです。
その事を話すと、今宵堂さんはとても嬉しそうに、「この器はお酒を注ぐと、燈色に本当においしそうに輝くんです。「貫入」と呼ばれる表面の細かなヒビにお酒が微かにしみこんで、小さな光りが生まれるのです。私達、この燈燈シリーズがすごく気に入っていて好きなんです。」注ぐと仄かに輝く酒なんて、ワクワクします。
お酒に注ぐ愛情を器に変えて、艶やかでエレガントな器を織りなす京都今宵堂さん、お見事です。こんな器屋さんと出会えて、やっぱりお酒って愉しいな、と思った用宗の町。
そんな今宵堂さん曰く、「静岡県は酒肴の宝箱」。そんな宝箱に住む幸せを、一日の終わり にほっと一杯、と愉しんで至福の時を過ごそうではありませんか…。