蔵元便り 柚野の里から

2012年09月

時代とのチームプレー


華やかな開会式で幕を開けたロンドンオリンピックが、日本勢の過去最多のメダル数という大活躍をもって幕を閉じました。特に、サッカーやバレー、そして各種目団体戦など、日本人が得意とするチームプレー競技は特に面白かったですね。テレビ画面に向かって、その活躍に我を忘れて応援していました。

そんな中、ある日本酒講座の講師に呼ばれ、授業を担当しました。テーマは、静岡県の日本酒の歴史と蔵元の生い立ちについてです。
蔵元の祖先たちの過ごした時代背景とともに、現在に至るまで、あまり知られていない話を中心にしましたが、受講者たちは、普段耳にしない昔話に興味津々。本当なら、教壇で話すよりも、お酒でも飲みながら話したい内容でした。
大正時代の資料によると、当時、ニ百軒近い蔵元が静岡県にはありました。が、現在はその約十分の一に減ってしまっています。
昔、蔵元が行っていた仕事は、地域に雇用を生み、地域をまとめる為に必要とされていたのですが、戦後の食糧難で米が配給制となり、醸造したくても出来ない、或いは戦後の国策による第二次産業化により、雇用が確保出来なくなったりと、蔵を合併させたり、やむなく廃業した蔵も実は多数ありました。

時代が変わり、現在は情報化時代。地球の裏側の出来事でも、今回のオリンピックのように、全世界同時にその映像を見たり、情報を得られるようになり、民族によるその価値観の違いすら知る事が出来るようになりました。が、日本人の生活は逆に、昔に回帰している感があります。
休みの日にはクワを振り、畑仕事に汗を流したり、ジョギングや自転車を楽しんだり、モノや心の豊かさを知ったうえで苦労や工夫を楽しむ。これは、日本人の新しいライフスタイルと言えるでしょう。
そんな中で変わって欲しくないものは、人との繋がりです。震災後は「絆」という言葉が大切にされましたが、これこそがいわゆる「チームプレー」そのものです。皆さんには、どうぞ身近なチームの人たちと、いつも絆を感じていて欲しいと思います。9月には、富士錦からお待ちかねの「ひやおろし」が発売されますので…。