蔵元便り 柚野の里から

2014年08月

国際品評会

富士錦を代表するお酒、富士錦大吟醸と純米酒は、今年も国際的な権威ある2つの食品審査機関から最高クラスの評価を受けました。

私たちがなぜこうした海外の評価に意義を感じ毎年出品を続けているのか。それにはいくつかの大切な理由があります。
ひとつは、これらの賞が、誰にでも買える市販酒に対する評価だからです。日本国内にも数多くの清酒鑑評会があり、私たちも毎年出品していますが、それらは自動車に例えればF1レースです。各蔵元が自分たちの技術を粋を尽くし、わずかな量だけ醸造したスペシャルなお酒で競い合います。

それに対してモンドセレクションは、無改造の市販車によるレースです。パッケージまで含めて店頭で販売されているのと全く同じ状態で評価されます。実際、近年の審査項目の中には、デザインや包装材料のリサイクル性はどうかといった、エコの観点からの評価もあります。

また市販酒は、もろみから絞ってすぐに瓶詰するわけではなく、タンクで熟成・管理し、最高のタイミングを見計らってから瓶詰め・出荷をします。その過程には、杜氏や蔵人だけでなく、多くの社員が関わっているため、会社全体の総合力が問われるわけです。

2つ目の理由は、富士錦に対する先入観や固定観念のない第三者が、自らの舌で審査して厳正な評価を下すという点が感じるからです。

そして、最後に毎年出品を続ける理由をもうひとつだけ。私たちが酒造りの仕事において何よりも大切にしているのは、スポットライトの当たらない日陰の仕事です。タンクをきれいに掃除する。酒袋をきれいに洗うなどといった目に見えない地味な仕事を、いかに誠実で丁寧な仕事をしているかが、最終的な製品の段階で大きな違いとなって表れてきます。当たり前のことを当たり前以上に…。

蔵人や社員全員がお客様に安全でおいしいものを提供したいという思いを込めながらやり続けられるか。その成果が客観的に評価されるのが、こうした国際賞の舞台であると考えています。

今年も、蔵の中での地道な作業の元、夏を越え日本酒のもっともおいしい季節がやってきました。純米原酒ひやおろしは秋色のパッケージに包んで最高の状態で出荷できるよう、9月4日発売です。