蔵元便り 柚野の里から

2015年02月

春いちばん

半月前、春一番が吹き荒れて舞い上がる土埃の中、準備をした蔵開きの前日。


ぱらつく雨の中設営を始めたテントが、風に煽られ前蔵の壁にぶつかり、肝を冷やしながらの準備でした。
しかし、この春一番が大気の流れを変え、週間天気予報では、ずっと雨だった3月15日の蔵開き当日は、気温は低かったものの穏やかな晴天の一日となりました。

お陰様で、19年目を迎える本年も一万人を超える大勢の皆様に柚野の里にお見えいただき、蔵元一同心より感謝申し上げます。
回を重ねることにより、地元の皆様やご来場の皆様に、一年の楽しみな行事のひとつとして、皆様の生活の一部に根ざした祭りとなったのではないかと実感しています。
ところで、古代社会から祭事などの終了後、神様に供えたお神酒や食物を下げて、
それを戴くことを「直会」といいます。
古代社会では、神事など大切な行事を行なう際は、緊張感を持って滞らないようにしなければなりませんでした。
神事が終了すると、公の正式な場はお開きとなり、酒席を設けて緊張を和らげたといいます
同じ意味合いを持つ言葉に「宴」があります。
「宴」は「歌い上げ」が語源とされ、神事が一致協力して終わった後、何事もなく終えられた喜びを皆で歌い合ったことが言葉のルーツです。
(「職場の教養」倫理法人会発行より)

現代、一年の締めくくりでもある三月は、新生活を迎え、うれし涙も悔し涙もある旅立ちの季節です。
緊張感ある忙しい毎日を過ごす現代の日本人も、一年間頑張ったその労をこの蔵開きで、ねぎらい合う、そんな宴の心の祭りになれたら…と願います。

田んぼで車座になりながら杯を重ねるこの素朴な祭りは、そんな日本人の心を体感するのにうってつけではないでしょうか。
最後に、ご協力いただきました柚野村おこしの皆様・地元の皆様、そして関係各所の皆様にこの紙面にて、改めまして心より御礼申し上げます。
満開の春を迎え、冬の辛さを糧として、また来年の活力とさせていただきます。
本当にありがとうございました。