蔵元便り 柚野の里から

2017年04月

待ちわびた春

狩宿の下馬桜が満開を迎え賑やかです。いつまでも寒さが続いた今年の春。 ようやく暖かくなったら、こぶしも白木蓮も桃も桜もそろって満開を迎えた、一足遅れの春の訪れでした。 本当に待ち遠しかったですね。

蔵では、4月20日にようやく皆造を迎え、こちらも例年より十日遅い春の訪れでした。 「皆造」とは、酒屋用語で、仕込予定のお酒をすべてしぼり終わったことを意味します。 今年は、タンク72本分のボリュームある酒造りでしたが、皆造り終わり、ひと冬の酒造りがお陰様で無事終了しました。


現在、杜氏達は酒造りの仕上げに、「火入れ」といって、タンクに出来たばかりの生のお酒をまとめて火入れ殺菌する最終工程に移りました。 ゴーという湯を沸かす唸るような音が、蔵から今も聞こえてきます。毎年この音が続くと、酒造りも最後だなと感じます。 秋より半年間、蔵に住み集団生活を続けながら酒を醸し続けた蔵人達の表情は、今、底抜けに明るく、その表情から酒に込めた深い情熱と心意気が伝わってきます。
今年はいつにも増して、笑い声の絶えないチームでした。 その要因は小田島杜氏のその明るい笑い声が、チームに活気をもたらし、折に触れ蔵人たちにかける言葉が、迷いなく説得力を持って正しい道に導いた結果だと感じています。本当に、気持ちの良いチームでした。
人は鏡なり、自分の持っている空気が、周りに波及しそれが鏡のように自分に映し出される、といいます。 自分の行動に責任を持ち、周りに良い影響を及ぼせる人になれるよう、行動することがいかに大切かを感じた半年間でもありました。