蔵元便り 柚野の里から

2006年07月

吊り橋の上で

 真っ暗な稲子川の吊り橋の上で、しばらく目を慣らしていると川辺に迫る森の向こうから、ホワッホワッと蛍の光が浮かんできました。
流れに沿って上手から下手へとゆるゆると飛んでいく蛍たちは、フワッと光るときは一斉に光り(不思議ですね)、本当に綺麗です。
サッカーのワールドカップは残念な結果に終わってしまいましたが、幻想的な蛍ワールドはこれからが本番です。
先日、久方ぶりに講演会に行ってきました。
三重県の蔵元さんのお話を富士宮で伺えるということで、知り合いの方々からのお誘いもあり、行ってきました。
そこで、とてもおもしろく心に残るお話しを伺えました。その冒頭は、時代の軸が変わっている、というお話でした。
例として、三重県では北川県知事が「黒船来る」と鳴り物入りで知事に就任したことにより、それまでの「いかに予算を使い切るか」という概念から、「いかに予算を残すか」に180度変わった。 この事によって、三重県は本当に変わった・・・と、おっしゃっておられました。
この、今まででは異端だった考え方が標準になり、その流れは全国に広がるであろうと・・・。
このような事例に代表されるように時代の軸が動いている、旧来の考え方ややり方が通じなくなっている、さあ、チャンスが来たよと、元気に声を大きくされて、古ければ古い業界ほどチャンスなんだと、おっしゃっていました。
また、江戸時代から続く家業がなぜ今も存続できたのか、と自社を自問すれば、それはある意味変わり者といわれるくらい、革新を求めたからだ、とおっしゃっていました。
「なんせ私のおじいさん、年間売り上げの3倍以上もする焼酎蒸留機を突然買うような人だったんですから、焼酎が売れなかったらどうするんじゃい」とつっこんでおられました。


日頃感じている事を、明快に言葉に表現された小気味よさに、場内も割れんばかりの拍手でした。 色々と考えさせられる6月でした。