蔵元便り 柚野の里から

2000年08月

2000年8月号

今年は、最高気温が連日35度を越す猛暑です。社会面では「雪印食中毒問題」が大きく取り上げられて、食料品の衛生管理に頭を悩ませている方も多いのではないのでしょうか。 当蔵でも、「商品期限ってどのくらいですか?」などというお電話を例年以上に頂いて、改めて日本酒の保存管理というものを考えさせられました。

醸造酒である日本酒に賞味期限という考え方は非常に当てはめにくいのです。
ビールのように新鮮さが命・1分1秒でも早く皆様のお手元という訳でなく、かといってワインやブランデーのように何十年もの時間をかけて熟成させて、年代物に仕上げていくというわけではありません。どの地酒蔵でも、一冬かけて醸した日本酒を約一年かけて出荷していく、というのが大きな目安となっているのではないのでしょうか。

一番大切なのは貯蔵方法。蔵内でも出荷後でも保存管理がおいしさの秘訣である事は間違いありません。特に暑い夏を通して上手に熟成させるには、空気に触れず、光に当てず、動かさずが三大原則。その上で、富士錦では、年間を通して品温を一定にする事が酒質を保つもっとも有効な貯蔵方法と定め、大吟醸は5度以下の吟醸蔵に、純米吟醸・純米酒・本醸造は15度以下に、普通酒は20度以下にとそれぞれ酒類ごとに区分された冷温貯蔵倉のタンクの中で熟成されています。

そして、そのもっとも旨みが出てくるタイミングを計りながら、瓶詰作業を行うのです。さらに、瓶詰めされた酒はまた各種酒類ごとに瓶詰製品冷蔵倉庫に納められて出荷を待つのです。富士錦では、実は今年、いままで空瓶倉庫だった場所を改修し小瓶専用の瓶詰製品冷蔵倉庫に整え、今までのものと合わせれば約100坪の冷蔵設備とし、出荷管理に万全の体制をしきました。これは、静岡県内または全国的にもっとも大きい規模の設備といえます。このようにもっともおいしい状態にきめ細かく管理して出荷される富士錦の酒です。手にとって頂けた時が一番の飲み頃です。とっておかずにお早目に・・・。