蔵元便り 柚野の里から

2001年11月

手仕事

 天気の良い日には、富士錦の蔵周りには、グルリと刈り取られた稲穂が敷き詰められています。
当蔵では毎年恒例の風景ですが、初めて訪れる方は皆、「何にするんですか?この稲穂・・・」と必ずお聞きになります。
「この稲穂を編んでコモにして、お酒に巻くんですよ」と説明すると、「はあ~こりゃすごい・・・」と絶句する人が大多数をしめます。
刈り取りした直後の稲は、当然水分を含んで湿っていますので、それを乾かすために、二日半ほど天日で乾かす作業は欠かすことが出来ません。
当蔵では、稲を刈り取って乾かすこの作業の繰り返しを、約2ヶ月行います。そして、十分に乾いた稲穂は、機織のような手順で、1本1本藁とともに編みこまれ、一枚の布ならぬ「コモ」となるのです。
手仕事を重ねてゆくこの稲穂酒は、全国の蔵元の中でも2~3蔵しか造られておらず、「手間隙を惜しまずに 良い酒を醸す蔵」の代名詞ともなっています。
一方で、今年から、純米酒を紙パックに詰め、しかも増量パック酒の仲間入りをさせてしまった、大手酒造メーカもいます。
今まで、「パック酒イコール低価格酒」 のイメージが定着しているこのパック酒市場に、なぜ特定名称酒(原材料の品質から製造方法まで、一定のレベルを満たした高品質の清酒)である純米酒を投入してしまったのか・・・・。
純米酒に一際思い入れの強い富士錦としては理解に苦しみます。
さて、今年も富士錦の酒造りが始まりました。
岩手より杜氏たちが入蔵し、米倉にはあふれんばかりの酒米が到着しています。
富士錦の酒造りの始まりです・・・。
地酒とは地元で愛されてこそ。

幻の醸造酒ともてはやされるのではなく、「うみゃあ地酒とうみゃあ焼きそばがあるところの、うみゃあ酒ずらよ・・・」と来客に振舞われるような、そんな酒をいつまでも造る蔵を目指し、長い一冬の酒作りに望みます。
どうぞ皆様 これからも富士錦の酒をよろしくお願い申し上げます。