蔵元便り 柚野の里から

2003年05月

大和魂

 蔵に一歩入れば、日本酒のほのかに甘い香りが漂うまだ花冷え厳しい4月の朝、11月から半年間、文字通り心血を注いで酒を造り続けた蔵人が、丁寧に道具を洗い清め、故郷へ帰っていきました。
家族からも離れ、必然的に24時間が酒造りを中心に使われるこの環境は、造り手の集中力と忍耐力を押し上げ、和を育み、何より酒造りへの自負と日本酒への愛情を醸します。
また、この半年の間、蔵人の唯一の娯楽?となる食事作りも一段落。
朝・昼・晩と規則正しく食事を作り、風邪などひかぬよう心を砕くのも、蔵人を支える富士錦の大切な仕事のひとつです。
特に昼食は蔵元をはじめ総勢18人がテーブルを囲みます。
毎日、台所を駆け回り、皆が「いただきます。」というころには、どんなに寒い日でも額から汗が流れ落ち、それをタオルでふきながら、「さあどうぞ。」と汗とは裏腹の涼しい声ですすめる台所担当者。
そんな姿を見ると、「ご馳走」という言葉が思い浮かびます。
振り返れば、この造りの最中に畑福杜氏がある取材を受け、「日本酒は”大和魂”です。」と申しておりました。
日本人が得意とするひとつの目標に、皆で邁進する協調性と相手の心を推し量る繊細さがあげられます。 この二つをもってうまれる日本酒は、日本人が造り出したやはり”大和魂”の酒だなぁと、思わずにはいられません。
富士錦は今年度春の新酒鑑評会で、静岡県大会・名古屋国税局大会ともに入賞しました。

心を尽くして醸した酒が、おかげさまで栄えある賞をいただき、蔵元一同喜びにあふれています。
新緑にあふれる柚野の里から、まずは、お礼かたがたご報告まで・・・。