蔵元便り 柚野の里から

2003年06月

お酒って田んぼで出来るのぉ?

 抜けるような晴天が続いた今年のゴールデンウィークがまるで嘘のように、連休の後はまるで入梅のようにシトシトと寒い日が続き、富士山もうっすらと雪化粧・・・。 箪笥の中身が忙しい皐月でした。
4月に行われた富士錦の田植えも、2日ともに雨でした。
どうやら、田植えの天候は、陽射しが厳しい晴天より、曇りぐらいが苗も疲れないんだそうです。
しかし、苗には良くても人間にはちょっとつらい・・・。
加えて、水を張った田んぼを歩くと、一歩一歩が「ズボッ!ズボッ!」と泥に足を取られ、前へ進むにもコツがいる。
そこで、田植えの日のお昼ご飯は、力が付くようにとお赤飯を炊き、おかずにもひと工夫をして田植え作業の労をねぎらいます。
やはりこの日はお赤飯が似合う晴れの日なのです。
そんなある日、5歳になる娘が、植代かき(水を張った田んぼの土面に高低差が付かないように、均一に高さをならしていく作業)を見ながら、友達と話をしていました。
「うわぁ、泥・・・」
「でもね、田んぼからお米が出来るんだよ」
「エー!お酒も田んぼで出来るのぉ?」
「ちがうよ。お酒は米とお水と肥料でできるんだよぉ。」
お米からお酒が出来ることを知っていたお友達は、この泥の中でお酒まで造るのかと目がまん丸。
それを聞いて、お米を使ってお酒を造ることを説明したい娘は、肥料という言葉までを使い、今度は私の目がまん丸・・・。
子供らしい想像力のあふれる会話に、心弾む畔道でした。
経済紙などでは「常識を破れ」などの華々しい言葉がよく並んでいます。
読んでいると肩が張り、 なにやら今のままでは全てがだめなような気がしてきます。

しかし、子供はいとも簡単に大人の常識を超え、様々な想像の世界を見せてくれます。
かのノーベル賞の田中さんも「常識に囚われず・・・」と受賞の感想を幾度となくおっしゃっていました。
きっと、視点が違うのですね・・・。
そんな気持ちを持ちたいものです。