蔵元便り 柚野の里から

2005年01月

あたたかい新年

季節外れの台風が通り、霜柱にも数回しかお目にかかることのできない暖かい新年です。
年の瀬などは「あんまりあったかいから、暮れって気がしない・・・」と何度話したことでしょう。 まさしく「暖冬」に始まる新年となりました。
現在のように蔵に冷蔵庫があり、仕込みタンクが「クーリングジャケット」なるもの(タンク1本1本にジャケットを着せ、その中を冷たい水が通ることで、タンクの温度管理ができる装置)を着せていると、外気温にそれほど振り回されずに安定した酒造りができるのですが、これらの装置が無かったら、こんな暖冬の冬は大変です。
酒造りは、あんまり気温が暖かいと発酵の進み具合が急激に進み、結果として狙った酒質とは遠いものができてしまうことが多いのです。
以前では、こんな暖かい冬の場合、氷のかたまりを買いに走ったものでした。
買ってきた氷を専用の容器に入れ、「もろみ」のタンクに入れて冷すのです。 水と米がフツフツと発酵する「もろみ」を氷でかき混ぜるこの作業は、本当に力仕事です。 加えて、この作業には1分1秒を争うスピードが求められます。

少しでも早く冷そうと、必死で、「かい棒」を操るその光景は、15年以上昔のことですが、ありありと思い出すことができます。
おいしい日本酒を醸そうと、1年ごとに研究を重ねて必要なものを揃え、良質の酒米で、「毎年1年生」の気持ちで酒造りに向かいます。
おかげさまで、富士錦ではこんな暖冬の冬でも安定した酒造りができるようになりました。 そして、皆様においしいお酒をお届けすべく、あわただしく新年を迎えました。
今年も、畑福杜氏率いる蔵人のチームワークは固く、明るく熱意に満ち満ちております。
今年初めての新酒、みなさんもうお召し上がりになりましたか?
・辛口のスッキリした「しぼりたて原酒」
・飲みやすくて新酒らしい香りと味の「純米ふなくち」
・お酒だけでグイグイ飲める「純米吟醸ヌーボー」

どれをとっても、今年の新酒は味もあって香りもある、上質の自信作となりました。
「初酒」と洒落てみませんか?