蔵元便り 柚野の里から

2005年09月

水の行方

 倉庫の角を曲がると、一面に広がる他の青々とした緑に、「わあ、すごい。緑の絨毯だ!」と、歓声が上がりました。
今年の夏は、遠方からのお客様が多くいらっしゃって、柚野の里の夏を満喫して帰られました。 特に、青々とした稲の海原は気持ちがほぐれるようで、強い陽射しの中、しばらく佇む姿が印象的でした。
「東京に住んでいた人が、こちらに越してくると、視力がすごく良くなるそうですよ。」と話すと、「そりゃあそうだよな。」と、うなずいていらっしゃいました。
台風十一号も、おかげさまでこの地では「おどかし台風」で通り過ぎ、お盆すぎ辺りから一気に色づいた稲穂が、もう頭を垂れ始めています。
ところで、富士山が大きな水瓶となって、地下からこんこんと豊富な水が沸くこの地に住んでいると、水不足の危機感には、いたく鈍感になっているようです。
先日、NHKスペシャルを見ていたら、地球の血液ともいうべき水が、世界で危機的な状況で不足している、その生々しい現地取材報告を見ました。
アメリカやアジアの穀倉地帯では、川の水が途中で枯れる「断流」が頻発したり、地下水が枯渇したりして農業が出来なくなる深刻な地域も出ている様子。 また、別の地域では、水道料が急激に上昇し、それがもたらす大きな社会問題がクローズアップされていました。
それは、少し鳥肌が立つようなショッキングな内容でした。
ちょうどその日は、蔵内の井戸水を水質検査に出した結果が出た日でした。

同封した他の二点の水よりも、蔵内の井戸水が最も綺麗な水だったことに、ちょっと驚いたり、すごく安心した日の出来事だったので、より、富士山の湧き水のありがたさを実感したのでした。
この水が、これから未来にかけてずっと湧き出してくれる環境つくりを、真剣に考えなければならないと、深く思う夏の夜でした。