蔵元便り 柚野の里から

2006年06月

朝露

 朝露に濡れる紫のつゆ草が、ツバメの低空飛行のそばで凍えそうです。
早朝はうっすら窓ガラスも曇り、肌寒い毎日が続きます。皆様いかがお過ごしでしょうか?
先日、南部杜氏自醸酒鑑評会の表彰式に出席するため、岩手に向かいました。
密かな自信を胸に秘め出品した酒は、入賞という結果。 残念ながら上位150位には入りませんでした。
この南部杜氏自醸酒鑑評会ですが、2001年には、出品数が849点であったのに、今年は604点にとどまり、酒造業そして酒販業全体の経営の厳しさを物語っております。
さて、その後・・・ 故郷に戻った畑福杜氏と恒例の「わんこそば」を食べながら話をしていると、「トラクターを買ったんですよ、おかげさまで・・・。」との明るい話題。
岩手では、一町歩の稲作をする杜氏は、今年の冬の大雪で留守番をしてくれている家族が、本当に往生した話をしながら、新しく買ったトラクターは、パーツを付け替えれば雪かき機にもなり、留守番の負担がだいぶ楽になると、嬉しそうでした。
同じく蔵人として来ているキュウリ農家の押切さんは、この冬の雪で、ハウスが3棟潰れて、今はその建て替えをしているのだそうです。

畑福杜氏の話は続きます。
畑福杜氏の本家は三町歩の稲作をし、およそ270俵の玄米を収穫なさるのだそうです。 が・・・、その稲作の収支決算は、およそ10万円のプラス。
これではとても、専業農家にはなれるはずもない、これが日本の農業の現状であると、杜氏の厳しい目が宙を漂います。
資源のない国日本が、食料の輸入大国であってはならない、これは、どんな国益より優先される、国としての命綱ではないのでしょうか。

水の豊かな国日本は、もっと先の未来を見通す努力をすべきではないだろうか・・・。
私たちは、次の世代に便利な「使い捨て」ではないけれど、本当に大切なものを残せるのだろうか・・・。 植えたばかりの早苗を見ながら、富士山に問いかけます。