蔵元便り 柚野の里から

2007年06月

巣立ち

 蔵人が岩手へ帰郷した頃より蔵の軒先に巣を作りはじめたセキレイのつがいに、雛が生まれ、ちょうど今日巣立っていきました。その懸命な親鳥の鳴き声に、 雛鳥たちも次第に力強く羽ばたきはじめ、大空へ初めて舞い立つ勇姿はドキドキと切なくなるような一瞬でした。
十一月より一冬・半年間の酒造りが無事終わり、春の国内新酒鑑評会・初夏の国際食品コンクールへの挑戦、又、先日は自社田での田植えも無事終了し、
蔵元として一年をゆっくりと振り返る一週間を過ごしました。
そんな中、鑑評会のきき酒会に出席しました。ずらっと何百も並ぶ各蔵の出品酒をきき酒することによって富士錦の酒が、その中でどんな味わいをみせるのか、ここが最も気になるところです。
ここには、各蔵が一冬情熱を注いだ素晴らしい日本酒が並んでいるのです。一通りきき酒して富士錦に戻り、気になる蔵のところへ行って富士錦へもどり…、その繰り返しです。どの酒も、蔵ごとの個性が光ります。自分のところに戻りもう一度きき酒をしていると、ある蔵元さんがいらっしゃって「この酒いい酒だねえどうやって造ったの?」と、豪快に肩を組まれました。
しばらくすると、会合でよくご一緒する専務さんが「この味、富士錦らしいよね。うちにはないんだよなこの独特の味…。」と、小さくつぶやかれました。競争相手が酒造りの同士となる瞬間です。その後に続く酒造りの話は、手ごたえのある酒造談義…。

ありがたいことに、静岡県の蔵元が集まると、そこには酒造りへの並々ならぬ情熱が醸し出されます。この同士と共に切磋琢磨すれば、きっと吟醸王国・静岡の名を、より広められるだろう、と思えるそんな蔵元仲間です。
静岡県の酒米と静岡酵母で醸した初めての純米酒「特別純米・ほまれ富士」、もう飲まれましたか?
爽やかな初夏にぴったりのお酒です。是非、お試しくださいませ。