蔵元便り 柚野の里から

2007年11月

新酒にほろり

先日いらっしゃったお客様が、「もう新酒は出た?」と、開口一番お聞きになりました。「いえー、まだなんですよ、ウチの新酒は12月に初出荷です。」と、答えながら日本酒の新酒の発売時期が一段と早くなっているなあと、改めて感じました。
これは、年々、暖かくなる日本の気候にも一因があります。温暖化によって、まず米の収穫時期を早くすることが可能になり、それによって酒を造り始める時期を早める事が出来るからです。今年の米で今年醸した新酒が搾り出される時期は、せっかちなこのご時世と同様に年を追う毎に早まっています。

また、蔵ごとに酒造りのスタイルも大分変わってきました。従来、酒造りの職人・杜氏(とうじ)は、春から秋にかけて農業に従事し、農閑期にあたる晩秋から翌春までの時期、造り酒屋に出稼ぎに来ます。富士錦でも、岩手県より畑福杜氏が率いる酒造りチームがもうすぐ入蔵します。
全国の約一,五〇〇の蔵を見ると、大手メーカーはもちろんの事、最近では、中小の造り酒屋でも、蔵元が杜氏となり社員と共に醸すやり方や社員スタッフで酒を醸すやり方に変える蔵元も珍しく無くなってきました。
そんな変化により、年間いつの時期でも、日本酒を醸し続ける蔵もあり、日本酒の「新酒」の時期は、年々早くなっているのです。
「酒屋万流」という言葉がありますが、蔵ごとに醸し方が違うのはもちろんの事、水も人も経営方針も蔵独自の個性が酒に滲み出る、ますますそんな時代となってきました。

富士錦の醸す酒は「大和魂」の酒…。日本人の美徳とされてきた、勤勉実直さがなければ醸し出せない酒です。徒弟制度により培われてきた技術と経験が息づく畑福杜氏の魂の酒です。
今年の新酒は、「12月1日」初出荷です。どうぞ、ご期待ください。