蔵元便り 柚野の里から

2009年06月

流れる雲

抜けるような青空の下、雲が流れるように富士山の方角へ移動しています。
輝くような透明な空気の中今日は、一切富士山が近くに聳えるように見えます。その足下で、田んぼでは早苗がホッとしたように太陽の光を浴び、数時間前の明け方の大雨はまるでうそのようです。今月は日ごとに随分温度差のある毎日です。いかがお過ごしですか?

そしてまるで、今月の天気のように変化の激しい世界の経済情勢です。
日本酒も、国税庁の発表する酒類課税数量を見ると、残念ながら清酒不振に歯止めはかかりません。若者のアルコール飲料離れが叫ばれ久しい現在、業界全体で大きな岐路に立っていることは間違いありません。昭和20年代位までは、日本酒は造れば売れた時代でした。
お酒=日本酒(しかない)時代でした。平成のはじめの頃、品質の高い日本酒を造りお客様に認めていただければ、営業活動はあまりしなくても売れた時代がありました。全国新酒鑑評会にて金賞を受賞することが、そのまま、営業活動に結びついていました。
そして現在、成熟したお客様が大部分を占める中で、品質の高い日本酒を造るだけでは、販売力に結びつかない時代になりました。

 富士錦では、現在、いつも変わらない品質を目指し、米造りから酒造りまでを一つの流れで酒造りスタッフが一貫して携わる事が出来るように、まず自社田で経験を積んでいます。
酒質が安定していて、お客様に安全で安心してお飲み頂ける事を、造り手が確信を持って日々仕事をしています。
又、日本酒の楽しさにひとりでも多くの皆様に触れていただく事が、大切だと考えています。一地酒屋として、富士山の麓のこの地の素晴らしさと、伝統ある日本酒造りに触れていただき、その味わいの深さを楽しんでいただく努力を続けていこう、そんな風に考えています。
そこに新たなチャンスがあるのではないかと、思う今日この頃です。