蔵元便り 柚野の里から

2010年11月

布団干し

今月の体育の日の連休は、秋晴れの気持ちの良い一日でしたね。毎年の事ながら、トタン屋根をぎしぎし言わせながら、近く来蔵する蔵人達の布団を干すのが、私は大好きなのですが、この日も絶好の日でした。
多分、たくさんの布団を干すのは、幼い頃の記憶のいとこが遊びに来る楽しい記憶の仕度と繋がって、なんだか嬉しくなるようです。結構単純です。
その下では、ハッピーマンデーを尻目に、芋焼酎の仕込に格闘する若手社員達。高く積み上げられた芋のコンテナーの山を見ながら、泥臭い芋洗いや選別の仕事をこなす手付きは、三年分の累積値か迷いなく、スッスッと進みます。

今年の秋は、蔵の2階にある蔵人達の部屋を何十年ぶりかで改装しました。「日本酒は大和魂です」と、語る畑福杜氏は、「蔵人に個室はいりません。」と話します。
「半年間の仲間の和を醸すには、まず時間を守らなければなりません。酒造りは緻密な仕事なので、体力も知力も必要です。その為には、どんなに仕事がきついときでも、規則正しい生活を、貫かなければなりません。だから、個室はいらないのです。隣の人の気配が感じられる大部屋にカーテンのしきり位が丁度よいと思います。」と…。
酒という生きものを醸す職人達は、半年間、休み無く働きます。その職人気質は、大和魂のごとく徹底しています。

二階の掃除をしていると、下の仕込蔵でかい棒を廻す、どんとんという音が響いてきます。蔵に住むというのは、酒の息吹を感じながら暮らす事なんだなあ、と、改めて実感します。
富士錦の酒造り、もうすぐ、始動です。
今年も心を込めて醸し、皆様のお手元へお届けします。