蔵元便り 柚野の里から

2011年02月

行火

大雪のニュースが全国各地で報じられ、年末よりずっと続く大寒波が、身に沁みます。


この底冷えする寒さに、年明けに灯油のストーブを新調し、ようやくひと心地つきました。そんな日の午後、東北人の蔵人・伊藤君が干し物をしまっているので、「乾いてる?」と聞くと、「普通に乾いてます。やっぱり、静岡はすごいデス!。」と、唸ってました。
屋外に洗い物を干し午後には乾く事は、雪国に暮らす人にとってはとてもびっくりする事のひとつ。温暖な気候のこの地・静岡に住む私達が気付かぬ内に受け取っている恩恵は、自分達が思っている以上に大きいような気がします。
そんな中、冷たい寒気を味方につけ、今年の酒造りも、折り返し地点を迎えようとしています。タンクの中で息づくもろみは、フツフツと息づいてはいますが、今年はそのタンクの下に温かい行火を入れ毛布で囲い、少し温めながら、その息づかいをコントロールしています。
(例年なら、冷たい風で冷やされているのですが・・・。)そんなもろみを見ていると、本当に生きている息吹が伝わってきます。

蔵見学で初めてご覧になるお客様でも、「あぁ、生きているんですね。」と実感されます。フツフツを話しかけるように、醗酵を重ねるもろみは、知らずしらずに人を癒してくれるのかもしれません。
そこに寄り添うように醸す蔵人達の仕事ぶりは、今年も気持ちが良いほど酒への想いで溢れています。
また、今年は富士宮市と合併して初めての「蔵開き」を、いよいよ3月13日に開催します。水がきれいな富士山の湧水が豊富に湧き出るふじのくにらしく、同市内に酒蔵が全国的にも珍しい4蔵となりました。
今年は富士宮市観光協会のバックアップの元、「日本一の蔵開き」とのぼりをかかげ、応援してくれる皆様も現れ、現在、蔵開き準備真っ直中です。どうぞ、皆様のお越しをお待ちしております。
無事、仕込みを終え、少し暖かくなった春にお会いしましょう。楽しみにしております。