蔵元便り 柚野の里から

2013年12月

不思議なもの

小雪を迎え、グッと朝晩冷え込んできました。お元気ですか?いよいよ、冬到来です。富士錦でも、早朝、和釜からもくもくと蒸気が上がり、酒造りが本格的に始まりました。
毎朝、冷え込む早朝の室仕事を終えて朝食にやってくる蔵人達は、汗をかき体から湯気が立ち上る、そんな感じで食卓を囲みます。今年富士錦に来て三年目を迎える小田島杜氏達は、食事の時も賑やかです。さっきそこで蛇を見てびっくりしたな(笑)から、調子の悪い機械を今度はどこを調節して機嫌良くしようか、なんて話を賑やかにしています。

そんな彼は、この世界では超理論派の杜氏と呼ばれています。緻密にデータを取り、パソコン入力して分析して酒造りを進めます。
「酒造りは、自分の五感や経験が一番大事ですけれど、やっぱりそれだけだと再現性は低いんですよね。それで、パソコンという便利なものが出てきたので、データを打ち込み続けていたら、グラフを見ていて「こういうときにこうなるんだな」というのが、だんだんわかるようになってきたんですよ。帳面につけるよりも後から見やすいし、すごくヒントになりますね。」と、 話す昭和26年生まれの小田島。彼の進取の気質と努力家の一面が垣間見えます。
そして、こうも話します。お酒を造っている過程では、 苦労や悩みが多くて楽しいことばかりではありません。


それでも笑顔を絶やさない彼は 「私が渋い顔をするとみんなが渋い顔になる。でも、私が楽しくなれば、みんなが楽しくなる。 そしてみんなで楽しくうまく回った時じゃないと、良い酒は出来ないんですよ。 陰であいつはどうだとか悪口を言ってたら絶対ダメ。 これは不思議なもので、腕じゃあないんですよ。 みんながひとつになった時は、不思議と良い酒ができるんです。」

先頭を切って仕事をこなしていく、そんな仕事ぶりの小田島は、こんな思いで酒を醸す杜氏だ。 富士錦にとって、彼との出会いは、大きな挑戦を生み出すまさに原動力となりそうだ。 来週初出荷の今年の新酒、どうぞ、お楽しみ下さい。