蔵元便り 柚野の里から

2014年01月

明日に願いを

12月の晩、生まれて初めてみるような光輝く「流れ星」を見ました。まるで、帚(ほうき)のように明るく太く流れていくその星を、ちょうどカーブを曲がった車のフロントガラス一杯に見た時は、思わず歓声があがりました。
願い事を祈ることは出来なかったけれど、「明日は良い日になるかも」と、感じるようなドキドキする一瞬でした。
次の朝、新聞のトップページを、富士山越しのふたご座流星群の見事な写真が飾っていました。きっと、多くの方が同じ流れ星をご覧になったと思うと、また嬉しく感じました。

一転、ほの暗い蔵に入ると現実に戻ります。でも、蔵の情景も悪くないと思っています。入り口には、真珠のように真っ白な酒米が洗米され、笊(ざる)に水切りされて並びます。
きちんと掃除された蔵に幾何学模様のように置かれた真っ白な酒米を見るたびに、
私は京都のお寺の枯(かれ)山水(さんすい)の庭を見るような清々しい(すがすが)気持ちになります。
日本の伝統的な美しさでしょうか…。丁寧でシンプルな潔さを感じます。
私達は、元禄年間に酒造りを始め、300年以上の歴史を持ちますが、初めから「富士錦」という名前があったわけではありません。
この名を「憲政の神様」こと尾崎行雄氏にいただいてから、2014年でちょうど100年を迎えます。
「錦に輝く富士山を称える」、また「富士に錦を飾る」という意味が込められたこの名前。 来年は命名100周年の記念の年となります。
それにふさわしい地元の誇りになるようなお酒に、また富士山が世界文化遺産に登録された今は、 世界に向けて日本の誇りになるようなお酒に成長していくこと。
次の100年に向けて富士山文化の一端を担うような酒造りに邁進していくこと。
それを目標に、社員・蔵人一同、決意を新たにしています。
本年賜りましたご愛顧、誠にありがとうございました。
心より感謝申し上げますと共に、輝かしい新年をお迎えいただくよう、祈念しております。