蔵元便り 柚野の里から

2015年07月

改新と創造の連続


熱波の中に漂うような一日を過ごし、ひと心地ついた夕方。すうっと窓から心地よい風が入り、その向こうに久しぶりの陽射しに照らされて、グンと伸びた稲がそよいでいます。

幼い頃から変わらぬこの風景。変わらぬ事のすごさが、この日は心にぐっと迫ってきました。脈々と受け継がれてきた里の人々の生活とともにあるこの田と畑と川と富士の山の風景は、日々の日常の中、当たり前のように溶け込んでいます。

それは、雨が続けば水路の水を見回り調節をし、初穂が出れば肥料を施す。自然の摂理の中にわが身をゆだね、その時に必要な仕事をし作物を育てている人々のおかげなのだ、と。そんな気持ちで飲んだ、一杯は、日中の暑さを振り払い心にも体にも力を与えてくれる滋味がありました。
古来二千年以上昔から造られてきた日本酒は、「改革と創造の連続」でした。米だけではなく粟や麦、果物でトライし、今の米の酒イコール日本酒に落ち着くまで、いろんな穀物による試行錯誤がありました。

日本酒づくりの歴史を俯瞰すれば、現在はうまい酒を造る技術が最高点に達しています。今ほどうまい酒を呑める時代は過去にありません。ただひとつ、時代の嗜好にマッチした酒を造らなければならない。
これが、酒造りに携わるすべての人の使命でもあります。「改新と創造の連続」の歴史を持つ日本酒の、これからにどうぞご期待ください。