蔵元便り 柚野の里から

2015年11月

冷え込む朝

 ずっと温かい日が続いた十一月でしたが、今朝は一転グッと寒さが皮膚の中まで入ってくるような冷え込みです。 里の家々の屋根は霜で真っ白に染まり、見上げると美しい冬山となった富士に朝日が輝いています。
早朝の澄み渡る空気の中、振り返ると蔵より上がる一筋の蒸気はほのかな温かさを感じさせ、 一際冷え込む早朝に学校へと向かう娘の背中を押してくれるようでした。
その蒸気の下では、今日もお酒を仕込む為の蒸米が古く大きな和釜で蒸しあげられ、 数週間後に新酒となって生まれてきます。
里の風景に溶け込んだこの冬の風物詩が、早朝から頑張る誰かの心をそっと励ましていればと、今日も心に願った朝でした。
富士錦の玄関先を飾る丸い「酒林」を真っ青な今年のものにかけかえました。
酒造りが始まってちょうど1ヶ月が経過し、今年の新酒「しぼりたて原酒」の初出荷をお陰様で迎えることが出来ました。
「酒林」は、昔より蔵を守るお酒の神様が宿るとされ、年に一回新酒が搾られると同時に掛け替えます。

新酒の「しぼりたて原酒」は、まさに甘辛ピンの味わいです。 今年は、酒造りに20・30代の蔵人も加わって、心新たに、今年も酒造りに打ち込みます。 どうぞ、富士錦の心意気をお楽しみください。