蔵元便り 柚野の里から

2016年05月

田植え

 霧のように降る雨の中、煙るような柚野の山々は深い緑色に映え、雨の翌日は白い雪すじを残し、最近の気温変動の激しさを物語っています。
無事閉幕した伊勢志摩サミットでも、議題に上った環境問題。 人類の叡智を結集し、次の世紀にも緑溢れる地球を残していくのが、現代を生きる人々の使命だろう…。
そんな中、富士錦では先週田植えが無事終了しました。静岡県の酒米「誉富士」と酒米の王様「山田錦」を今年も植え付け、米作りから酒造りへの一貫造りを志します。日々の農作業で真っ黒に日焼けしたスタッフの笑顔が一際でした。山の緑と田の緑、見渡す限り緑のグラデーションは、この地の生命力をあらわしています。
日本酒は、旨み成分(アミノ酸)が豊富という他にあまりない特徴を持っています。 それは、醸造酒ならではの味わいであり、だからこそ調味料としても重宝される訳です。
そして、その旨み成分は、料理と一緒に味わった時、大きな力を発揮します。 料理の旨みと酒の旨みが重なって深みを増す、つまり増幅効果があるからです。 また食材の臭みを消す作用もあり、その意味でも素材の味を純粋に楽しませてくれます。

富士錦の中でも、「純米酒」は旨み成分がとくに多く、味も香りも主張しすぎないので、 主役のお料理を引き立てる名脇役だと自負しています。 海の幸山の幸に恵まれた食の国・駿河に生まれた幸せを、富士の地酒「富士錦」と共にご堪能ください。